Copepodologia(コペポドロジア)

カイアシ類学のメモ書き

架空のクマムシと言われてる「オンセンクマムシ」

クマムシとは

クマムシは死なない生物として広く知られて、そこそこ知名度はあると思う。ここでは、クマムシについて簡単に説明する。

f:id:coccoli:20141029213318j:plain(光学顕微鏡で撮影したクマムシ

クマムシは緩歩動物門に属するものをいい、体長1mm未満の微小な動物で4対の脚を持つ。近縁な動物群に、節足動物(昆虫やエビ・カニなど)や有爪動物(カギムシ)がある。

そして、クマムシの生命力。クマムシが乾燥して代謝がなくなった状態「乾眠(cryptobiosis、anhydrobiosis)」または乾燥した形状から「タル状態」になると、-273℃~100℃の範囲、570,000Gyの放射線(ヒトは10Gyで助からない)、有機溶媒、紫外線、超高圧、真空といった極限的環境のなかで生きることができる。

この乾眠といった状態はクマムシだけではない。他にもセンチュウやワムシ、ネムリユスリカもこの性質を持つ。

クマムシについて、ひと通り紹介したところで本題に入る。

 

架空生物と考えられる「オンセンクマムシ

クマムシの分類は、緩歩動物門に属し、大きく分けて真クマムシ綱と異クマムシ綱に分けられる。新クマムシはやや細長い形態で、異クマムシはやや円形の形態である。

f:id:coccoli:20141030184734j:plain(←:真クマムシ綱 参考文献より) 

f:id:coccoli:20141030184757j:plain(←:異クマムシ綱 参考文献より)

そしてここで登場する「オンセンクマムシ」。頭部に感覚毛を持ち異クマムシと共通だが、口の周囲には乳頭を持ち真クマムシと共通している。そう、異クマムシと真クマムシの両方の特徴を持っているのである。よって中クマムシ綱とされて、クマムシを真クマムシ、中クマムシ、異クマムシと3つに分けることになる。そして形態的特徴に三角の突起を体側部分にもつ。これはオンセンクマムシ特有ものである。

オンセンクマムシはスイス人の線虫学者Rahmによって九州の雲仙温泉で発見したという記録がある。(1937年)しかし、疑問がある。実は同年、ドイツにてオンセンクマムシの酷似種を発見したことを報告している。それは三角の突起を持つものであった。オンセンクマムシとその酷似種の特徴である三角の突起は、他に報告されていない。Rahmただ一人だけなのであったのだ。これは不自然である。クマムシを研究する人は多くいて、そのなかで同一の人が見つけたことになる。さらに問題が生じる。Rahmは以前に多くのクマムシを同定を行っていたが、いずれも別属のクマムシを同属と報告したことがあり、Rahmが書いた論文中に口撃を書き入れ、自分を誇大に主張した前科がある。したがって、オンセンクマムシを含むRahmが発見したという数種のクマムシは捏造をしたという可能性があるのだ。こうしてオンセンクマムシの新綱新種は剥奪された。

しかし、ここで転機が訪れる。1978年にBindaによってイタリアの小川から発見されたクマムシ。このクマムシにオンセンクマムシと類似する形質をもっていたのだ。捏造だと思われていたオンセンクマムシも存在確認に期待されるようになった。

 現在に至り、オンセンクマムシの標本はなく、報告もされていない。オンセンクマムシの存在、正体を明らかにしなくてはならない。

 

 

 

 

参考

東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻細胞生理化学研究室くまむし研究グループ

 堀川大樹,2013,『クマムシ博士の最強生物学講座』,新潮社,16-21

松井透 高知大学理学部理学科生物科学コース

野田 泰一,1997,『オンセンクマムシは存在するのか』,日本動物分類学会誌(2),13-15(pdf)

 

クマムシ博士の「最強生物」学講座: 私が愛した生きものたち

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  • 作者: 堀川大樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/09/18
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