読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

coccoli’s blog

理科とくに生物に関する記事を書いてます。

陸上に棲むカイアシ類 陸生ソコミジンコ

 カイアシ類は甲殻類のひとつでカイアシ亜綱(Copepoda)に属するものを言う。種数は13,000種におよび、多様性が富んだ生物である(カイアシ類については2014年10月2日の記事を参照)。カイアシ類は普通、海洋プランクトンで知られているが、川や湖、池、温泉など幅広く繁栄しているのもカイアシ類の特徴とも言える。そのなかで、水がない、または湿った、土壌や落葉中に生息するカイアシ類というものも存在している。今回はこのような陸上に棲むカイアシ類のこと陸生カイアシ類について述べていきたい。

 

陸生カイアシ類の種類

 陸上に生息するカイアシ類では決まった種類が報告されている。ソコミジンコ(Harpacticoida目)の一部とケンミジンコ(Cyclopoida目)の一部である。両者の目(order)とも海洋とくに沿岸部、汽水河川で見られるもので、これら目(order)自体は陸上へ派生したではないが、比較的、海よりかは汽水域や淡水域で知られている。日本において陸生カイアシ類は数えられる程度の種しか報告されていない。陸生ソコミジンコでは7種が報告されている(青木. 1999)。この7種の名称と分布を下記に紹介する。

  • コノハミジンコ Phyllogunathopus viguieri   …北海道、東京
  • チビソコミジンコ Epactophanes richardi     全国
  • コブソコミジンコ Moraria terrula          北海道西~東北北部
  • アルキソコミジンコ Moraria varica         全国
  • ツクバソコミジンコ Moraria tsukubaensis      筑波、徳島
  • コケソコミジンコ Bryocamptus zschokkei      全国
  • チギレソコミジンコ Maraenobiotus vejdovskyi    北海道、青森、茨城

 これらの種は、落葉堆積物中やコケ中、雪下、土壌中に生息すると述べられている。とくにブナ林の落葉中における報告が多い(Reid. 2001)。葉1gで40個体になることもあるという(Nielsen. 1966)。中にはウツボカズラの捕虫袋内(Hamilton et al. 2000)や苔内(Lewis. 1984)からの報告もある。

 

生息している環境

 落葉堆積物中やコケ中、雪下、土壌中に生息するといっても大体は共通した環境に生息していると言える。土壌中よりかは落葉に生息する(菊池. 1974)、氷河で発見されたカイアシ類は、氷河上に覆われた土壌に生息(菊池. 1991)、雪下にある落葉中(菊池. 1992)、雪中の土壌近く(大高. 2012)、水分をもつ土壌上(Nielsen. 1966)のように、いずれも土壌よりかは土壌に近い所の雪中または落葉中で、水分を保った部分に生息すると考えられる。これらカイアシ類は小型で細長い(大高. 2012)また、卵数が少なく、卵は大きい(Coull. 1970)という間隙動物がもつ特徴があり、上記の生息箇所は間隙環境に近いこともあり好んで、その場所を選んだのかもしれない。特に雪中は雪粒子と散在する水によって海や湖などの砂中間隙と似た環境が作られ、そこにはカイアシ類を含めた多様な間隙動物が観察される(大高. 2012)。また、土壌に近い間隙環境に棲むことは、土壌中からの栄養が供給できる部分なのかもしれない。

 進化的に言うと、陸生カイアシ類は海洋や湖沼において底生性であるソコミジンコ目が多く見られる。もともと湖沼のようなところに住んでいたものが干上がるなどとして水がなくなり、これが陸生へ派生したと筆者は考える。海洋や湖沼における底生性のソコミジンコは時々、水柱へおよぎ出すことも知られ(向井. 1996)、落葉中や雪中に見られる個体は、これに由来すると思える。

 雪中に棲むカイアシ類は土壌から遠ざかるほど生存率が低下する事がわかっており、その個体は付属肢欠損などの大きな損傷を受けることが観察されている。これは雪融解等で、水位上昇で分散したが、その後の水位低下によって雪粒子に潰されたことが示唆されている(大高. 2012)。

 皇居(東京都心)で、落葉に被された土壌中からカイアシ類が発見された例がある(菊池. 2001)。発見されたのは3種で、P.viguieri(コノハミジンコ)E.richardi(チビソコミジンコ)M.varica(アルキソコミジンコ)である。これらは人の手が加えられていない里山に生息する種で、皇居の土壌は里山に近い環境であることが結論付けられている。ちなみに、この3種に当てはまることだが、土壌中にいるカイアシ類は未開拓の土壌の方が多くいることが分かっている(Fiers et al. 2000)。

 

 

 

参考

青木淳一. 1999. 日本産土壌動物. 東海大学出版会. pp561-568.

Coull, BC. 1970. Shallow water meiobenthos bermuda platfrom. Occologia 4: 325-357.

Fiers, F., V Ghenne. 2000. Cryptozoic copepods from Belgium: diversity and biogeographic implications. Belg. J. Zool. 130: 11-19.

Hamilton, R., JW Reid., RM Duffield. 2000. Rare copepod, Paracyclops canadensis (Willey), common in leaves of Sarracenia purpurea L. Northeast. Nat. 7: 17-24.

菊池義昭. 1974. 陸生ソコミジンコについて. 動物学雑誌 83 (4): 438.

菊池義昭. 1991. ヒマラヤの氷河上にいるソコミジンコ. 動物分類学会誌 45: 72.

菊池義昭. 2001. 皇居の陸生ソコミジンコ類. 国立科博専報 35: 99-101.

Lewis, MH. 1966. Thefreshwater Harpacticoida of New Zealamd: a zoogeographical disccussion. Crustaceana. Suppl. 7, Stud. Copepoda 2: 195-211.

向井宏. 1996. 藻場(海中植物群集)の生物群集(8)葉上動物の個体群動態. 海洋と生物 18 (1): 44-46.

Nielsen, LB. 1966. Studies on the biology of Harpacticoida (Copepoda, Crustacea) in Danish beech leaf litter. Natura Jutl. 12: 195-211.

大高明史. 2012. 融雪期の雪中における無脊椎動物の生息状況. 低温科学 70: 113-117.

Reid, JW. 2001. A human challenge: discoveriing and underatanding continental copepod habitats. Hydrobiologia 453/454: 201-226.

 

日本産土壌動物―分類のための図解検索

日本産土壌動物―分類のための図解検索

  • 作者: 青木淳
  • 出版社/メーカー: 東海大学出版会
  • 発売日: 1999/03
  • メディア: 単行本
  • クリック: 7回
 

 

コペポーダに関しては調査研究をしているので対応できます。お問い合わせは以下のメールアドレスにお願いします。
  " cuacabaik0509(/atm.)gmail.com "  件名には「coccoli's blog お問い合わせ」と記入