Copepodologia(コペポドロジア)

カイアシ類学のメモ書き

アリが棲む植物「アリ植物」としての「フクロカヅラ」

 植物によっては植物体内部に空洞を持つものがあり、その空洞を貯水として利用したり、空洞を作ることで早く成長するなどと利用方法はある。その中でアリを共生させる植物もある。この植物は「アリ植物」と呼び、シダ植物や裸子植物被子植物の100属で超える。ほとんどのアリ植物が熱帯多雨林域で植生している。アリ植物はアリに食されたり寄生されているわけでなく、アリを住ませ、害虫やつる性植物の侵入から攻撃、排除、つまり防衛をするという共生の関係である。

 

アリノスダマ(蟻の巣玉)

 Wallace, A.R.は1878年の雑誌「Tropical Nature」においてアリ植物である、アリノスダマ Mydnophytum(蟻の巣玉)を取り上げた。この発表から「アリ植物」が周知されていった。

f:id:coccoli:20150804154312j:plain (宮城教育大学よりアリノスダマ)

 アリノスダマはビスマーク諸島、ソロモン諸島に植生しするアリ植物である。茎が肥厚しており、その中が空洞になっている。この空洞部分にアリが住みついている。アリノスダマの天敵がハキリアリであり、ハキリアリはその名の通り、葉を切って巣へ運ぶ習性がある(巣へ運んだあと、キノコの栽培をおこない、キノコを食料とする)。このハキリアリから避けるためアリ(大体は攻撃的なアカアリ)を住ましていると考えられている。

 

仇となってしまったアリ植物

 アリ植物はアリを住ませることで害虫から防衛するという性質がある。しかし、この性質から時には仇となることがある。そこには第三の共生者であるカイガラムシとシジミチョウの存在が関係する。カイガラムシとシジミチョウは双方ともアリに甘い蜜(甘露)を提供する。その代わりにアリに防衛をさせてもらうという共生関係の昆虫である。しかし、この第三の共生者、カイガラムシとシジミチョウはアリ植物から栄養を奪うのだ。したがって、アリ植物はどんどん栄養を奪われつつ、アリからは排除されないまま、衰退していってしまう(カイガラムシに関しては実際にアリ植物の害虫かは分かっておらず、アリコロニーを拡大させ、防衛を強めるという益虫といった考えもある)。

 

フクロカヅラ

 フクロカヅラ(別名:カンガルーポケット) Dischidia pectenoides Person はマニラ地方原産で観葉植物として日本でも多くの花屋で売っている。ちなみに日本に上陸したのは昭和3年に小石川植物園東京大学大学院理学系研究科附属植物園)の松本侍郎氏によってマニラから持ち込まれたことで、現在、日本で生きるフクロカヅラは、その第二世の株とされている。形態は乳白緑色の単色で極めて小型のつる性植物である。細い肉厚の葉を持っており、ところには嚢状葉を持っている。嚢状葉は5cm、幅3cm、厚み1.5cm、内外に白粉を帯びており、非常に肉厚である。花は濃いピンク色であり、蕾の先だけ2つに別れるだけの極小さな開花が特徴的である。

f:id:coccoli:20150804165804j:plain (私が撮影した、飼育しているフクロカヅラ)

 

種子は綿をもち、風によって散布される「風散布型種子」である。

f:id:coccoli:20150804165915j:plain (私が撮影した、フクロカヅラの種子)

 

フクロカヅラの嚢状葉にてアリを住ませる

 アリ植物としての部分が嚢状葉となる。この部分はもともと貯水する器官であり、乾燥時に貯水する役割がある。したがって嚢状葉は別名、貯水葉ともよばれる。この嚢状葉にアリは穴をあけて、巣をつくり、アリ植物として働くというわけである。しかし、フクロカヅラにとっては、アリ植物として嚢状葉があるわけでなく、実際は貯水する目的であるため、アリは部外者なのかもしれない。

 

 

 

参考

川崎 勉「アリ植物とアリ」遺伝10(7), 8-12, 1956

市岡孝朗「アリ植物を食べる昆虫」北方林業65(4), 113-116, 2013

佐々木尚友「珍奇なフクロカヅラ(植物だより3)」採集と飼育2(2), 65-67, 1940

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