coccoli’s blog

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唯一セルロースを合成できる透明な動物「サルパ」

サルパはヒトと同じ脊索動物門の尾索動物亜門に属する。ホヤと同じ分類となる。外観からみると透明な魚のように見える。大きさは数十センチが多く、無性生殖により群体を形成して数メートルに達することもある。体の表皮外側に被嚢という組織があり、様々な機能を持つことが明らかになっている。

 

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サルパ;©Matthew Meierより許可を得て転載

 

被嚢の機能
 尾索動物類の特徴としてセルロースを合成できることである(Hirose, E. 1999)。セルロースを合成できる動物は尾索動物類以外では知られていない。このセルロース部分が被嚢であるが、サルパの場合は透明で、ホヤでは皮の部分に当たる。この被嚢は二層構造になっており、外側はクチクラ層で硬い。
 被嚢のように体表外につくられる組織は尾索動物類だけである。しかし、被嚢はどのようにつくられるのかは分かっていない。また驚くことに、その被嚢には被嚢細胞と呼ばれる細胞をもつ(Hirose, E. 1999)。体表外に細胞があるのは発生的に不思議であるが、生態学的に血球に類似しており、出血による体外へ血液の流出に由来していると考えられている。
 被嚢はただ保護としてあるとされていたが、多様な機能を持つことが明らかになっている。例えば、発光することや(Aoki, M. 1989)、光合成をする(Hirose, E. 1996)、他者認識をする(Hirose, E. 1997)といったものがある。また、神経伝達をおこなうことが分かっており(Mackie, C. C. 1987)、サルパの特徴である群体形成に寄与していると考えられている。被嚢細胞はアメーバ状を示しており、食作用を持つことが明らかになっており、被嚢へ侵入した異物を取り込むところが確認されている(Hirose, E. 1999)。また、酸性の液体が入った液胞を有し(Hirose, E. 2001)、消化に使用されるかとか思われる。しかし、ホヤでは、これらのような多様な機能を持っておらず、固着性であるため身を守ることを主な役割に振り分けていると考えられている(食作用はある)。また、興味深いことに、被嚢表面には「ニップルアレイ構造」とよばれる30μm〜40μmの突起状構造が多数ある(Hirose, E. 2015)。これによって光は反射が防がれ、捕食者に対してカモフラージュの役割があると考えられる。これが、有光層に生息するにも関わらず捕食者に捕食されず個体数を維持することを支持していると考えられる。

 

フィルターを使った摂食
 サルパには入水孔と出水孔があるが、入水孔にフィルターを形成させ、フィルターにかかった餌をフィルターごと摂食する。フィルターの目の大きさは4〜5μmであり(Bone, Q. 1991)、これよりも大きい餌粒子は摂食できる。つまり食物連鎖とは他に、micro bial loop(micro bial loopとは;2015年11月5日の記事)との接点があるといえる。このフィルターの更新は10〜300秒の頻度でおこなう。このフィルターを用いた摂食法は「ろ過摂食(filter feeder)」と呼ばれる。この特徴として摂食量が多いことだが、サルパの場合はさらに、他のろ過摂食動物と比べて桁違いにろ過能が高い。そのろ加速度も1時間あたりに2Lに及ぶこともある(西川淳 2003)。参考として、オキアミは数十mL、カイアシ類は数mLとなる。ただし、餌粒子の濃度が高すぎると目詰まりを起こし、摂餌不能になることもある。また、後方へ泳ぐと簡単に破壊され瀕弱である。サルパは外洋に分布する性質があるが、これは餌粒子の濃度が低いところを選んでいる可能性がある。

 

生態系への影響
 中緯度海域では時よりサルパの大量発生(salp bloom)がおきる。数千平方kmに及び1立法mで数千個体になることもある(西川淳 2001)。この際、植物プランクトンとマイクロプランクトンの著しい減少が見られる。
 サルパは無性的に生殖をおこなうことができ、このとき増殖能はとてもたかい。サルパの大量発生はこれによって寄与していると考えられる。

 

 

参考

Aoki, M. (1989) Biol. Bull. 176: 57-62.

Bone, Q. (1991)  Acta. Zool. 72: 55-60.

Deleo, G. et al. (1981) Acta. Zool. 62: 259-271.

Hirose, E. et al. (1996) Invertebr. Biol. 115: 343-348.

Hirose, E. et al. (1997) Biol. Bull. 192: 53-61.

Hirose, E. et al. (1999) Biol. Bull. 196: 113-120.

Hirose, E. et al. (2001) Zool. Sci. 18: 309-314.

Hirose, E. et al. (2015) Jour. Mar. Biol. Ass. UK. 95 (5): 1025-1031.

西川淳. (2001) 海洋号外 27: 207-215.

西川淳. (2003) 日本プランクトン学会誌 50 (2): 98-103.

Mackie, C. C. (1987) Biol. Bull. 173: 188-204.

 

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